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I don't want no retrospective.

長続きしない

オカザキさんとゴロウさんのこと

少し前に旭川に行った。

事前に調べておいた有名な焼き鳥屋を夕食にと考えていたが、ホテルへの道すがら寄ってみると新年明けたばかりで臨時休業とわかった。しかしながら旭川で有名なラーメン屋である蜂屋が隣にあり入ってみた。クサくて異質で美味かった。

ホテルにチェックインしてまずは大浴場に行く。ゆっくり浸かって部屋に戻ると17時前。ベッドでごろつきながら夕飯どこで取るかなと食べログを眺める。蜂屋のあった飲み屋通りで良さげなとこがあったので、そこを第一候補に、2店目にちょっとしたバーを検索してホテルを出た。


その店は焼き鳥屋なのだが、戸を開けるとそれは狭い、カウンター7-8席に奥に座敷があるだけ。トシのいったママさんが1人でやってるところで客も全員地元客だった。入れないかなと思ったが、ちょっとずつ避けてくれて肩や肘をぶつけながら地元のおじさん方と席を一緒した。

串を少しとビールを飲んで、居心地もそんなに良くないし出ようかと思っていたら、隣で1人飲んでいたおじさんが話しかけてきた。

「この店に若い人なんて珍しいね」

この人がオカザキさん。60手前くらいの人だった。自分が札幌から観光で来ていることや、している仕事のことなど簡単な自己紹介をしてたら、オカザキさんもいろいろ話し出した。まあ飲み屋でよくあるような社会とか政治の話とかスポーツの話とか。あとオカザキさん以外のお客さんも全員知り合い同士らしくて、あの人は校長先生とか社長だとか役所で稼いでる人とか教えてくれた。話が盛り上がって来てオカザキさんは日本酒を一緒に飲もうとどんどん注いでくれた。

他のお客さんがほぼほぼ帰ったころ(それでもまだ20時過ぎ)、オカザキさんがもう一軒行こうよ、いや行くぞと行って僕は着いていくことにした。店の払いをオカザキさんがご馳走してくれたし、普段から酒飲みの僕はこういう出会いがのちのちどっちに転ぼうと面白いのはわかっていたので。当初予定してたカクテルの美味しいらしい2店目は無しにした。

タクシーで10分15分乗ったくらいだろうか、旭川の銀座だかって言ってたかな、飲み屋がちょろちょろ集まってるけど三が日で人通りもなく寂しい場所だった。ここでよく飲んでるんだ、っていう「焼き鳥いいね!」という店だったのだが、ここは本当に安くて美味くていろいろサービスしてくれるし、歳は言えないけど何とも綺麗なお姉さんが絶妙にエロくてオススメです。旭川駅前とか主要ホテルからタクシーで1000円以内だから是非とも行ってみてほしいと声を大にしたい。


入店するとカウンターの先客で1人おじさんが飲んでいた。これがゴロウさん。オカザキさんと友人らしくたまたま居たみたいだ。見た目は三遊亭好楽そのもので、話し方もそんな感じだった。3人並んで飲み始める。僕はオカザキさんのキープボトルの鏡月を薄く割って飲んでいた。オカザキさんは着いた時点でほろ酔いだったけど、酔えば酔うほど面白くなりそうだったのでオカザキさんのはだいぶ強めに作って渡していた。

そんな酒を3杯くらい飲んだころ、赤い顔したオカザキさんは妙齢(?)のママさんに向かってお前はほんと良い身体だな、おっぱい揉みたい、抱かせてよ〜なんて言い出していた。そんなことを毎度言ってるのかは知らないが、ママさんもじゃあ抱いて〜〜なんてノリ良くケラケラ笑ってる。カウンターの中にはその旦那さんもいたんだけどにやにや笑ってるだけだった。

ゴロウさんともちょろちょろ話したあと、近くに住んでるらしい結婚適齢期の娘さんがいるという話になった。ピアノが弾けて綺麗でさあ、って写真も見せてくれたがまあ綺麗だった。ほとんどお見合いみたいな時間だった。僕は接客業をしているので、だいたいの人に話を合わせるくらいはできるが、その空間の人たちはエラい僕を気に入ってくれて、初めて会った僕に酒をおごりつまみをサービスしてくれて、結局そこでボトル全部飲んでつまみも3皿くらい食べたのに会計は取られなかった。


オカザキさんの卑猥な話が頂点に達するころ(時間にすると約22時)、ゴロウさんがオレは近くの○○(飲み屋らしい)にいるから、来たかったら来なよと言って1人で先に出てった。

オカザキさんは翌日も仕事があるらしいしもう歩くのもやっとっぽかったけど、行こうぜ〜〜〜と元気良く外に飛び出したので案内してもらった。

その通りで2回くらい角を曲がるとその店はあった。バンドが演奏できるバーと言うのか、オカザキさんもゴロウさんも楽器や歌をやってきたらしく、昔の良い話とか仕事で全国回ってた話をいっぱい聞けた。オカザキさんはそこでもオ○ンコとかしばしば言ってたけど、聞いたら風俗も一度も行ったことないらしく、死ぬまでにソープ行きてえなみたいな話してたと思う。僕もそのころは結構飲んでて記憶が薄い。ここでもオカザキさんとゴロウさんのボトルを頂いて鏡月ウイスキーを割ってひたすら飲んでいた。

23時を過ぎたころだろうか、ゴロウさんが娘さんから新年の挨拶も無いしそもそも最近会ってないし電話も来ないと言い出した。僕とオカザキさんはじゃあいま電話しちゃいなよ!何ならこれから合流しようかなんて言っていた。ゴロウさんがしぶしぶ電話したら繋がって、たどたどしい60前の父と30過ぎの娘の会話をしばらく静かに聞いていた。近くに居ないか、良かったら合流しないかなんて言ってたら、もう仕事を終えて帰っちゃうよとのこと。そっかー残念だな、とゴロウさんは明るく、でも寂しそうに言って電話を切った。

正直言うと僕も娘さんに会いたいななんて思い始めていたので、ちょっと残念だった。夜中に酒を良い感じに飲んだら綺麗なお姉さんが居て欲しいって少し思うじゃない?その店は男4人(店主も一緒に飲んでた)だったからなおさら。


気付くとゴロウさんが静かに泣いていた。電話も久しぶりで声を聞けて嬉しかったって。なんか良いなーって思いながらボトルの最後の酒を飲んで、日付の変わる前に店を出た。

ゴロウさんが、明日チェックアウトしてやることなかったらコーヒーでも飲むかって言ってくれて番号を交換した。タクシーでそれぞれ別れた。オカザキさんは家が徒歩圏内らしく千鳥足で消えてった。

タクシーでホテルに着いた。1000円以内だったし、その日は食事も酒も全部おごってもらったから、おつりは運転手さんにあげた。

大浴場でさっぱりした後、部屋でVOD付けたらタートル今田監督のえっちい作品あってついつい見ちゃったらいつの間にか寝てた。


気付いたらもちろん朝だったんだけども、ベッドがシモンズだからやっぱり寝やすかった。大浴場がサイコーだったからまた入った。朝食も美味しく食べて部屋で普段見ない朝の番組を見たりしてチェックアウトの11時。昨日の記憶だと、ゴロウさんの方から電話が来るはずだと思ってて、しばらく電話を待ちながら街をぶらついてたら12時を過ぎていた。こりゃもう来ないなと思って前日と同じ蜂屋でラーメン食って、駅前のイオンのスタバで2時間くらい時間をつぶして、JRで札幌に帰った。


あのとき自分が電話してたらまた違った展開だったのは間違いないし、ゴロウさんも電話来ないな、って待っててくれたかもしれない。

1人も知り合いのいない旭川だったけど、いま僕のことを知ってくれてる人が5,6人いる。そして僕のアドレス帳にはゴロウさんの番号がしっかり残っている。次いつ行くかもわからないしもう2度と会わない運命かもしれない、でもとっても意味のある良い時間だったなって思うし、小説でも映画でもない現実にこんなことが結構たびたび起こるってことだけちょっと書いておきたかった。おわり